ホテイアオイ

石井 遊佳

ここはインドのチェンナイ。
毎日職場への行き帰り、アディヤール川を渡る。
街中のゴミと排水がたれながされる川。
橋の上にたちこめるたとえようのないにおい。

くらい水面にホテイアオイの花をみつけた。
まっくろい水のまんなか、ヒマラヤの空のいろが、ゆうらり、ぷかり。
ゴミでうめつくされた岸辺では、
牛がのんびり放尿しながら、犬とカラスといっしょにゴミあさり。

けさ、この川で沐浴する偉大な人がいた。
偉大な人が空をみた、ホテイアオイの目で空をみた。

水はひろい、ホテイアオイもひろい。